pre-production #1

聞こえないふりをしたが2014年に発表した、既発曲を中心とした5曲の新録音源集。タイトルから察するに、著名なプロデューサーを迎えて本格的に取り掛かっているという噂のアルバムに関する“中間報告”といった位置付けか。
既発曲については、これまでリリースされたていた佐藤氏のデモ音源的なニュアンスの強いものと異なり、ライヴで聴くことができるメンバー3人のアンサンブルがきちんと再現されている。特に、彼らにとっての最重要曲でありながら、これまで決定的な音源が残っていなかった“八月の朝焼け”がやっと形になったことは喜ばしい。また、ベースによって低音が強調され、リズム・トラックの音が柔らかくなったことで、歪な部分が少なくなり、聴きやすさは大分向上している。
なお、CDRの前後に収められた新曲については、エレクトロニカアンビエント調の穏やかな作品だが、シンセ、オルガンの音色が優しく響く、彼らにとっては新機軸の楽曲である。
フルアルバム制作中とはいえど、いつ完成するか分からないのが現状だろうから、聞こえないふりをしたの現在形を知るには最適の一枚であるといえよう。