浅虫スーパーコンパニオン

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極東ロック「BOOTLEG」扱いの音源を除くと初となる公式シングル。新レーベルTRIANGLE BEAT第1弾と銘打ち、iTunesなど配信媒体を整えた、満を持しての発表。その記念すべき曲として選ばれたのは、グループにとってのアンセムと呼ぶに相応しい“浅虫スーパーコンパニオン”である。
今までライヴ毎にアレンジが微調整されていたこの曲だけに、音源としてはどのような形で提示されるか若干心配ではあったが、強靭なビートに下世話なシンセリフなど、決定版といって差し支えないものとなっている。一方で、Aメロにおけるコール&レスポンスの部分については、さすがにライヴの熱狂を完全再現とはいかず、しょうがないとはいえ物足りなさも少々。
とはいえ、極東ロックの代表曲が正式にリリースされたことはとても喜ばしいことなので、これをきっかけに彼らが持ち曲をどんどん形に残してくれることを願いたい。

Ringo Star

4人のうち170cm越えの女子が3人という、見栄えの良さという点では第2の黄金期を迎えたといえるりんご娘。
『2016愛踊祭』優勝というデカい実績をゲットし、その御褒美としてAKB48楽曲も手掛ける多田慎也生田真心タッグによる楽曲が制作された。
タイトル曲“Ringo Star”は、現行アイドルシーンと地続きのテクノポップな曲調で、オーディエンスと一緒に合唱できそうな前奏・後奏のパートや、高揚感のあるサビなど、過去のりんご娘楽曲とは比較にならないほどに気配りのある、流石のプロフェッショナルな出来。
明らかに洗練された一方、オートチューンをかけたヴォーカルエフェクトなどは、厳しい歌唱レッスンなど基礎に重きを置くという彼女らのカラーを損なわせる気がしないでもないが、Cメロではきっちりとこぶしを効かせてくれるから、元々のりんご娘らしさも保たれている。
カップリング“だびょん”については(どうしてもいい言葉が見つからなかったため)ノーコメント。

twilight e.p.

kikoenaifuriwoshita(聞こえないふりをした)の頭脳・佐藤氏によるソロ・プロジェクト。販売方法にあえてCDという形態を取らず、mp3ダウンロード・コード付きカセットテープという形を選んでいる。
シーケンサー1台で制作されたという楽曲群は、シンセ音が鳴り渡る中に耽美的なピアノの音色が響く環境音楽的な作風で、基本的にはkikoenaifuriwoshita名義で発表されているデモ音源の延長上にある。特にカセットA面にあたる“said”は聞こえない節そのもの。B面“corpse of summer”はレゲエ風の鍵盤に軽妙なブレイクビーツが心地好い曲で、ソロ作らしい気楽さが良い形で現れた曲のように思える。なお、mp3ダウンロード盤にはボーナストラックが2曲入っていて、それらはノイズ交じりのドローンといった感じ、なのかな?
本家本元kikoenaifuriwoshitaが、フルメンバーで足並みを揃えにくくなっている状況のため、佐藤氏の現在進行形のヴィジョンを音に反映させるためのものとして、今後このプロジェクトがますます重要視されていくものと思われる。自由な活動に期待したい。

BOOTLEG I EX VIDEO EP

青森テクノシーンの中心人物たちが集結したスーパーユニット極東ロックによる初のリリース音源。あえて「BOOTLEG I」と題された4曲入りのCDR。これをシリーズ化していずれはプレス盤を……という野心を感じさせるタイトルだ。
以前配布されたプロモ盤と比較すると、方向性がテクノ歌謡路線に強化された感があり、表題曲“EX VIDEO”などは約5分半の中に様々なキメが用意されたド派手な展開をもつ楽曲になっている。とはいえ、2曲目の“毒松茸”リミックス版も含め、アシッド調のビヨビヨ音が効果的に用いられていて、クラブミュージック的な刺激も保たれている。
収録曲はすべてDOKDOK総裁による作詞作曲。説法で存分に発揮される教祖としての言語感覚が、歌詞という形になるとややありきたりな表現になるのが個人的には気になるが、「Hな0930」「天然むすめ」「ポルチオ開発」などの名詞のチョイスは超ツボで、さすが総裁と思わされる。
また、4曲それぞれバラエティーなリズムが味わえて聴いていて飽きないものの、総裁の狂信的信者(?)というキャラ設定上のためか、他のメンバー4人の個性がまだ音源では判別できない。折角のスーパーユニットなのだから、徐々にフィーチャーされてほしいところだ。

The Milky Way

ヨーコトリヤベが2008年から2015年にかけて断片的に発表してきた楽曲をコンパイルし、自主レーベル・アルファオメガレコーズからライヴ会場及びネット配信限定で発表したセレクションアルバム。
楽曲の多くはクラブミュージックに接近したテクノ/エレクトロ寄りのアレンジが施されているが、丸みのあるシンセの音色には愛嬌があり、どこかファニーなポップ性が随所に見え隠れする。
また、そのような楽曲の中にあっても、明確な歌メロが存在していたり、でなければボイスサンプルが効果的に用いられていたりと、シンガーとしてのアイデンティティが一貫して守られていて、その結果クラブミュージックからもポップスからも微妙にはみ出しているような、逆に言えば双方の音楽を包括するような、境界線上のポップ・ミュージックになっている。
過去音源を放出した作品集という位置付けではあるが「宇宙」というコンセプトでまとめられた楽曲には統一感がある。8曲入り41分というフルアルバムサイズのボリュームで1000円(会場価格)はとてもお得。個人的には、この他にもまだリリースに至っていない楽曲がいくつか存在しているはずなので、未発表音源集の第2弾リリースも望みたい。

thinking of you

弘前市を本拠地とする社会人サッカークラブ、ブランデュー弘前の応援歌を、弘前市を拠点とするバンドCreepsが担当し、リリースされたチーム公式グッズという位置付けのシングル。
表題曲はバンド初期を彷彿とさせる軽快なビートのストレートなロックだが、サビで歌い上げるわけでもないクールネスがあり、心に秘めた情熱が見え隠れしつつも大っぴらには見せないところが現在のCreepsらしさであるといえる。サポーターによるコーラス入りのヴァージョンと、バンドメンバーのみによるオリジナルヴァージョンの2種類が収録されている。
カップリングは2枚目のアルバム『Rolling Rolling』のタイトルチューンが再収録されたもの。青森朝日放送『路地裏探偵団が行く』のテーマソングにタイアップされていることからの収録だが、再レコーディングされたものかどうかはクレジットに書かれていないため不明(すみません)。
企画盤としてもシングルとしても気が利いていて、Creeps、ブランデュー弘前どちらかのファンならば手に入れておいて損は無いCDであろう。

生たまご

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リアルゴールド青森県内でラジオパーソナリティとして活動している張間陽子さんを中心としたパンクバンド(らしい)。
公式サイトによると1997年に結成されたとのこと。これまで断続的に地域のロックイベントに出演していたようだが、そこで披露されていたという持ち曲をスタジオレコーディングしたのが本作と思われる。
と、ここまでやたら伝聞調の記述になっているのだけれど、実際に彼女らを生で観たことも無ければ、ラジオ番組を聞いたこともないのだった。正直、肩書きから予想するに、予備知識が無ければ聴くに堪えないノベルティグッズ的なCDかと思い、高を括っていたが、なかなかどうして。シンプルな3ピース編成によるサウンドながら、さすが本職と思わせる美声が心地好く、想像以上に音楽的に聴きやすい。
単調なリフのみで構成された短い曲が多いので“パンク”と称するのも理解できるが、印象としては80年代末バンドブーム期に居たようなギャルバンみたい。看護婦のコスプレで、健康・病気に関するテーマを唄う、というコンセプトも含め、企画臭が漂うところもそれっぽい。全6曲15分というサイズも功を奏して、退屈せずに聴くことができる。